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海外の話が多め。近頃は中国が多め(中国海警局・中国海監、深海潜水艇、感染症など)。

【動画】 韓国 海洋警察、中国漁船に対してはじめて機銃を発射 どのような経緯で発砲が行われたのか?

20161103210337YouTubeより)

11月2日、韓国の海洋警備安全本部(海洋警察)の警備艦が、中国漁船による違法操業と取り締まりへの暴力的な妨害活動を続けたとして、船体へ照準を合わせて機関銃を発砲した。韓国の海上警察当局が、違法操業の中国漁船に対して機銃を発射するのは初めて。

(韓国メディア日本語版から多く記事が出ている。日本メディアではNHKが比較的に適切な表現をしている。)

韓国の海洋警備安全本部によりますと、1日午後、インチョン(仁川)の沖合の黄海で違法に操業していた中国漁船2隻をだ捕し、えい航していたところ、それを妨害しようと30隻余りの中国漁船が集まってきました。
韓国側はこのままでは危険にさらされると判断して、船体に備えられた機関銃を使用し空中への警告射撃だけでなく、中国漁船の船体近くに向けても発砲し、合わせて600発ほど撃ったということです。中国の漁船や乗組員にけが人などは出なかったもようだとしています。
韓国 違法操業の中国漁船に機関銃600発撃つ | NHKニュース

違法中国漁船に機関銃で警告射撃 死傷者はなく=韓国当局(聯合ニュース)

 

ネット上で、日本の海上保安庁も、違法操業の中国漁船に対して発砲を求めるような無邪気な 脊髄反射的なコメントを見かける。

韓国の、黄海の違法操業と取り締まりに対する抵抗はかなり激しい。どのような経緯で発砲する事態に至ったのか?これについて少し。 

 

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韓国では10月7日に、中国漁船が取り締まり中の高速艇に体当たりして沈没させる事件が発生している。事件の直後に、韓国の国民安全処・海洋警備安全本部(以下、海洋警察)は、情況次第で、機関砲・機銃の発砲や体当たりなどを行うことを決定していた。

韓国海洋警察の高速艇、中国漁船の体当たりによる沈没事件(1)|その後、まとめ - pelicanmemo

 

11月1日午後5時頃、黄海(韓国では西海と呼ぶ)の小青島の沖約90kmの、韓国の排他的経済水域(EEZ)で、中国漁船50隻が違法操業していることを確認した。中部海洋警備安全本部の機動船団の警備船4隻と支援艦艇3隻で、取り締まりを開始し、中国漁船2隻を拿捕した。

 

海洋警察による取り締まりの前半の、拿捕するまでは、次の動画のようだったのだろう。6分強と少し長いが、韓国海洋警察の取り締まりの様子(ごく一部)が分かりやすい。

(動画6分15秒)

161101 해경 중국어선에 공용화기 첫 사용 - YouTube(海洋警察、中国漁船に共用火器のはじめての使用)(注:11月1日に公開された動画で、タイトルには今回の取締活動のもとと書かれているが、1日午後の取り締まり活動のものかは未確認(韓国メディアがとりあげていないため)。)

中国漁船は、お互いの船をロープで連結して取り締まりを妨害している。

韓国海洋警察は、警備艦の高圧放水銃で水を大量にあびせて援護している間に、警備艦の搭載高速艇が一番外側の漁船にとりつき、隊員が乗り込んで漁船を制圧。連結しているロープを切って1隻を拿捕している。

 

この取り締まりの間に、M60機銃の発砲はなされていない。

 

しかし、中国漁船2隻を拿捕し、曳航して仁川に向かかう途中、周囲にいた中国漁船約30隻が、海洋警察の警備艦に対して、進行方向を横切ったり衝突を試みるなど、暴力的な妨害を繰り返してきた。

今回の報道では、銃撃の映像ばかりが特に取り上げられているが、中国漁船が警備艦に対して横から突進して、衝突寸前(衝突した?)の時の映像も公開されている。
(海洋警察の警備艦による銃撃の正当性を示すために、公開する事が重要。)

20161103210336

YouTubeより)

 

(YTN ニュース動画1分50秒)

해경, 불법조업 中 어선에 공용화기 첫 발사 / YTN (Yes! Top News) - YouTube(海洋警察、違法操業中の漁船に共用火器をはじめて発射)

 

海洋警察機動団の団長で、3000トン級「太平洋 3015」艦のキム・ジョンシク(김정식)艦長(総警(警視正))への電話インタビューによると、次のような経緯だったそうだ。

 

中国漁船2隻を拿捕し、曳航して仁川に向かう途中、周囲にいた中国漁船約30隻が、海洋警察の警備艦に対して進行方向を横切ったり、衝突を試みてきた(接触や衝突した?)。

最初は、K-12ゲージ(ゴム弾)(参照:고무탄を使用、高圧放水銃で放水し、無線や音声による警告を出していたが、中国漁船の暴力的な対応は続いた。

これ以上の、接近や接触、衝突などの暴力的な抵抗を容認した場合、隊員の生命に危険が及ぶと判断して、共用火器(機関砲や機銃、(Crew-served weapon))の使用を決断した。
まず、M-60機関銃による、空に向けた威嚇射撃、次に、漁船船体に対して、人がいないだろう船首と船尾に照準を合わせて発砲が行われた。

(警備艦4隻から銃撃が行われたようだ。(報道の弾数が600〜700発と多いのは、威嚇射撃の分も含まれている。それだけ中国漁船が執拗に抵抗していたのだろう。)) 

20161103210337

YouTubeより)

中国漁船の違法操業の現場で共用火器を使用したのは初めてだがプレッシャーは無かったか? との質問に対して、キム総警(警視正)は、訓練を頻繁に行っているのでプレッシャーは無かったと答えている。
また、これからも中国漁船による違法操業と、法執行活動に対する集団での暴力的抵抗に対しては、機関砲の使用も含めて強力に対応すると話した。

해경 전단장 "고무탄에 꿈쩍안해…기관총 쏘니 도망가"(聯合ニュース)

 

今回の機銃の発砲は夜なので少し分かりにくい。2012年のM60機銃の実弾射撃訓練の様子から、こんな感じで発砲が行われたと思われる。

대한민국 해양경찰 M-60기관총 사격훈련 - YouTube(韓国、海洋警察、M60機関銃射撃訓練)(2012年)

 

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なぜ、違法操業の中国漁船の、取り締まりへの抵抗がここまで激しくなったのか?

地理的に近く漁船数が多いこともあるだろうが、大きな原因のひとつに、韓国の海上警察組織の対応の弱さがあって、中国漁船側が長年にわたって "つけ上がってきた" からだと思っている。

その背景には、中国や北朝鮮への配慮、国内外の政治の問題があり、今回、海洋警察が機関砲・機銃の発砲を決定できたのは、海洋警察の優柔不断さに対する韓国世論の叱責があると言われている。

一方で、現在の韓国では、チェ・スンシル(최순실、崔順実)・スキャンダルが青瓦台(大統領府)と政界、韓国社会を大きく揺るがせ、政府がちゃんと機能しなくなっている。海洋警察の現場は、上の上の方の政治的判断を待たずに対応が出来たのかもしれない(良いか悪いかは別として)。 

韓国海洋警察の高速艇、中国漁船の体当たりによる沈没事件(2)|なぜ攻撃的になってきたのか? - pelicanmemo

実効性に疑問を呈する声もあったが、中国漁船に機関銃を使用できたのは、取り締まりの強化を求める世論があったためとみられる。海洋警察上層部の優柔不断な対応に批判の声が高まり、現場の隊員らの銃器使用への負担も軽減した。

韓国海洋警察関係者は「海洋警察の警告が単なる脅しではないことが広がれば、中国漁船の抵抗行為も減少すると思う」と述べた。

棒から拳銃、機関銃へ 違法中国漁船への対応強化=韓国

 

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中国外交部の華春瑩(华春莹)報道官は2日の定例記者会見で、中国漁船への発砲について「武力を使った暴力的な対応に強い不満を示す」と発表。
また、人民日報系の環級時報は「犯罪行為」「野蛮な対応」「完全に狂った(丧心病狂的行为)」という表現を含む社説を発表した。

2016年11月2日外交部发言人华春莹主持例行记者会 — 中华人民共和国外交部

社评:韩海警机枪扫射我渔船是丧心病狂_评论_环球网

違法中国漁船への機関銃射撃に中国紙「韓国は完全に狂った」-朝鮮日報

 

韓国外務省のチョ・ジュンヒョク(조준혁)報道官は3日の定例記者会見で、中国外交部の批判に対して「根本的な原因は、違法操業と取り締まりに対する暴力的な挑戦行為である」と反論した。

韓国が中国側の問題提起に反論 違法漁船への機関銃使用で(聯合ニュース)

 

10月7日の、海洋警察の高速艇への中国漁船の体当たりと沈没事件の時は、中国外交部の孔鉉佑(孔铉佑)次官補が韓国・ソウルを訪れ、遺憾の意を表明、中国側が少し軟化したことで緊張が和らいだ。

今回の発砲については、韓国政治の混乱の影響もあり、どのあたりが落とし所になるのかまだ分からない。 

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