(中国科技网より)
9月16日、中国の7000m級有人深海潜水艇「蛟竜」号の新しい支援母船「深海一号」の建造が、武漢市の中船重工武昌船舶集团有限公司(中船武昌)ではじめられた。
支援母船「深海一号」は「蛟竜」号専用の母船として設計・建造されており、完成した後には、蛟竜号もその技術的性能を十分に発揮できることだろう。さらに6000米級のROVとAUVの搭載と運用が可能で、3500m級ROV「海竜二号(海龙二号)と6000m級AUV「潜竜一号(潜龙一号)」を同時に立体運用する「三竜探海(三龙探海)」も想定されている。
これまでは「向陽紅09(向阳红09)」が「蛟竜」号の母船として活躍してきた。
しかし、1978年に進水した古い海洋調査船を改修した船のため、作業能力や航行速度、さまざまな機能に限界がある。格納・整備用のハンガーは無くクレーンも無いので、熱帯でも露天に置かれたまま、メンテナンスや修理を行わざるをえなかった。長らく、新しい支援母船の建造が熱望されていた。
「深海一号」は、2019年3月の交付が予定されている。
一方、「蛟竜」号は5年間の"試験性応用"段階を完了し、1年をかけた大改修と技術的アップグレードが行われる。そして2019年から、次の"事業化運用"段階に進む。
国家海洋局の孫書賢(孙书贤)副局長は建造開始の式典で、中国の深海調査能力と深海海洋科学の研究レベルを引き上げることで、海洋科学技術のイノベーション(創新発展)を即して、中国の国際海底区の競争力に対してプラスの作用を与え、海洋強国の夢(海洋强国梦)の実現に重要な戦略的意義を持つだろう、と話している。
中国、7000m級有人深海潜水艇「蛟竜」号、5年間の試験性応用段階が終了 事業化運用へ - pelicanmemo
Ads by Google
「深海一号」は、中国大洋鉱産資源研究開発協会(中国大洋矿产资源研究开发协会 (COMRA))に所属し、中船重工708研究所が設計を行った。
全長90.2m、型幅16.8m、型深さ8.3m、設計吃水5.5m。設計速度16ノット以上。航続能力は14000海里以上。
電動ポッド推進システム(アジマス・スラスタ)2基と、DP-1級の自動船位保持システムを装備。長首楼船型で、アイスクラスはB3級(中国船級社の基準。日本海事協会のClassNKでは"IC"相当)で海氷のある海域も航行できる。(新型の総合海洋科学調査船「大洋二号」も同じクラス)
様々なタイプの実験室と無人潜水装置を装備している。蛟竜号の運用に際しては、作業前にはマルチビーム測探や海底地形マッピング、流向流速計やCTDによる目標海域の環境調査が行われ、水中では、超短基線(USBL)などによる測位と、2系統の水中通信システムによる蛟竜号と母船との間で音声や画像・動画のデータ通信など、水中と水面での十分なサポートと、船上でのメンテナンス、そして深海サンプルと海洋データの現場での処理と分析能力を有している。
甲板には複数のコンテナラボを設置できる(CG画像では5〜6個載っている)。また船首には、ヘリコプター等が着船できるヘリパッドを装備するようだ。
簡単に書いてみたが、10年前と比べると長足の進歩だ。
海洋強国というスローガンはダテじゃないことを実感させられる。カネとヒトと政治力を集中的に投資し、毎年のように最新鋭の総合海洋調査船を進水させ、世界のあちこちの海での科学調査や資源探査の活動を行う。新たなデータをとるだけではない、船員や海洋科学者の育成を積極的にすすめている。
10年後はどうなっているだろう。
我国深海科考利器首艘载人潜水器支持母船开工建造 - 国家深海基地管理中心
2019年,“蛟龙”号有望搭乘“专用母船”出海“深海一号”16日武昌开建 - 中国科技网
“深海一号”载人潜水器支持母船在武船重工开工建造 - 海洋工程网
中国初の有人潜水艇母船の建造が開始 - Record China
深海でサンドイッチ 「しんかい6500」支援母船「よこすか」の食卓 (〈私の大学〉テキスト版)
- 作者: 平井明日菜,上垣喜寛
- 出版社/メーカー: こぶし書房
- 発売日: 2015/10/13
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る