(via.FAO)
中国で、2013年にヒトへの感染が初確認されたA/H7N9鳥インフルエンザ。2016年〜2017年のシーズンには、過去最大の感染者数を記録し、中国の31の省・直轄市・自治区のうち過半数の16で感染者が確認されました。
2017年の感染者589人、うち死者259人、致死率は40%以上。
【H7N9鳥インフル】世界的な流行のリスク、もっとも高い。 新型インフルエンザ - pelicanmemo (2018-05-09)
そのH7N9鳥インフルエンザ(H7N9鳥インフル、H7N9鳥フルとも)、
米国連邦政府の保健当局によると、ワクチンや治療法を開発するために必要なウィルスのサンプルを、中国は、米国の当局や研究所からの度重なる要請にも関わらず、1年以上も提供していないそうです。米国のニューヨーク・タイムス紙が、8月27日付けの記事で報じました。
For over a year, the Chinese government has withheld lab samples of a rapidly evolving influenza virus from the United States — specimens needed to develop vaccines and treatments, according to federal health officials.
Despite persistent requests from government officials and research institutions, China has not provided samples of the dangerous virus, a type of bird flu called H7N9. In the past, such exchanges have been mostly routine under rules established by the World Health Organization.
China Has Withheld Samples of a Dangerous Flu Virus - The New York Times (Aug. 27, 2018)
中国拒绝向美国提供H7N9禽流感病毒样本 - 纽约时报中文网
(赤字強調は管理人による)
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【H7N9鳥インフル】 高病原性へのウイルスの変異 タミフル等が効きにくく、ヒト感染例は増加傾向か - pelicanmemo (2017-10-29)
【H7N9鳥インフル】今シーズンは過去最大の感染者数に 累積の感染者数は1200人超 - pelicanmemo (2017-02-28)
H7N9鳥インフル カテゴリーの記事一覧 - pelicanmemo
英国のテレグラフ紙の8月29日付けの記事によると、英国でも同じで、H7N9鳥インフルエンザ・ウィルスは2013年と2016年に提供されたが、その後の変異した可能性も考えられるバージョン (alternative version) は、1年以上の間、度重なる要請をしても提供はされていません。
A leading UK expert confirmed that China had - in 2013 and 2016 - shared early forms of the H7N9 virus with international partners including the UK. However, a subsequent UK request for an alternative version of the virus made over a year ago “for safety considerations” has not been met.
China ignores UK request to share deadly flu virus samples - The Telegraph (29 AUGUST 2018)
2016年〜2017年に感染地域が拡大し、感染者が大きく増えたので、ウィルスの変異が再び起きていた可能性もあります。その都度のアップデートは重要です。
(via.FAO)
パンデミックの可能性のあるウィルスのサンプルは、世界保健機関 (WHO)によるインフルエンザ株サーベイランス体制のもとで、海外の研究機関に無償提供することが求められています。50年以上、世界各国が協力してきた仕組みで「新型インフルエンザ対策の基礎的な条件」と位置づけられています。
中国の対応は、この合意に反し、これまでの対応と食い違ってきているということです。
一方、中国側、中国日報の英語版(チャイナ・デイリー)の9月1日付けの記事では、WHOによると、中国CDC(*)は、米国CDC(*)に対してウィルスを送ったと反論しています。また、中国CDCの匿名の関係者は、今年7月に、5つのH7N9のウィルスのサンプルを米国CDCに送ったと話しています。
2013年のH7N9鳥インフルエンザのヒト感染例が確認されて以来、GISAID(インフルエンザウイルス遺伝子データベース)を通してDNAデータをアップデートして、共有しているとも伝えています。
(*) 米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention(米国疾病管理予防センター)) , 中国CDC(中国疾病预防控制中心(中国疾病対策予防センター))
China and the United States have continued sharing influenza virus samples for public health purposes, and the US Centers for Disease Control and Prevention has received five H7N9 viruses from the China CDC since May this year, according to the World Health Organization.
では、日本の国立感染症研究所 (National Institute of Infectious Diseases, NIID)ではどうなのか、気になるところです。
この話題について、韓国メディア(朝鮮日報)や、台湾メディア(自由時報ほか)は報道しました。
日本メディアは、いまのところ伝えていません。(どこに忖度しているのか、中国の感染症の話題について、あまり多くは伝えない...)
ぜひ、取材をして、確認して伝えてほしいものです。
英テレグラフ紙は、なぜ中国が停止しているのか不可解であると書いています。米国トランプ大統領の中国に対する強硬姿勢と、米中貿易戦争の長期化によってさらに悪化するのかもしれません。
その一方で、新型感染症が発生した発展途上国は、ウィルスを無償提供したとしても、先進国の営利企業がワクチンを製造して高価く販売してしまい、そのワクチンを発展途上国が使えないという不公平が生じているという事実もあります。
2007年には、インドネシアが、国内で発生したH5N1インフルエンザのウィルスの外国の研究機関への無償提供を拒否し、米製薬会社に売却する意向を示したことで、議論となりました(後に再開)。
中国共産党・政府の機構改革により、バイオ・セキュリティと安全保障への取り組みが変わったり、中国としては、先に、国内の研究機関と国営製薬会社でのワクチンの研究開発を進めさせ、特許取得させ、西側先進国よりも一歩も二歩も先んじたいという思惑があるのではないかと思います。
・・・ところで、ロシアがH7N9のウィルスのサンプルの提供を要請した話があり、当時、簡単に記事にしました。
ロシアへも、提供されたのでしょうか?(苦笑)
Russia Asks China for H7N9 Flu Sample - Sputnik International (18.04.2013)
【H7N9鳥インフル】ロシアが「我が国にもウィルスのサンプルをよこせ」と中国に要求。: メモノメモ (2013年4月19日)
人感染H7N9禽流感病毒毒株已发往其他四个WHO流感参比和研究合作中心 - 中国疾病预防控制中心 (2013-04-09)
中心专家参加世界卫生组织人感染H7N9禽流感疫情应对电话会议 (2013-04-19 )
獨家》中國拒交H7N9病毒株 我釋出唯一高突變種供美研究 - 自由時報電子報
무역전쟁 중이라고… 중국, 미국에 '바이러스 몽니' - 조선닷컴(貿易戦争中だと... 中国が米国に「ウイルスで意地悪」 - 朝鮮日報)
WHO Collaborating Centre for Reference and Research on Influenza (VIDRL)
国際保健規則(IHR):世界的な公衆衛生上の安全保障の枠組みの10年:第一部~IHRの歴史~
国際保健規則(IHR):世界的な公衆衛生上の安全保障の枠組みの10年:第二部~IHRの履行~
国際保健規則(IHR):世界的な公衆衛生上の安全保障の枠組みの10年:第三部~Pacta sunt servanda: IHRの遵守~